ONE DAY Episode.07 マフラー編んで下さい

「ただいまぁー……」

午後9時過ぎ。サングラスをしたまま恭介が疲れた顔をして帰ってきた。
鞄を床に落として、よろよろと私が座っているソファに倒れこんだ。

「おかえり」
「疲れたぁ―……踊りすぎて腰と足が痛い……俺はもう踊れない……何も出来ない……」

くたっと脱力感満載で、かぶっていた帽子とサングラスを床に落とす。

「ハイハイ。お疲れ様」

ヨシヨシと恭介の頭を撫でた。
昨日の夜、『仕事が早く終わるから、久しぶりにうちにおいでよ』メールが届き、仕事帰りに恭介の部屋へと遊びに来ていた。1日仕事して帰ってきた恭介は疲れ切った顔をしていた。

「……ところでゆら、これ、なに?」
「何って……マフラーじゃん」

私の足元まで長く伸びているブラウン系のふわふわした毛糸で編まれているマフラー。今、私が必死になって編んでいるものだったが、恭介は不思議そうな顔をしながら、マフラーに触れる。

「長くねぇ?!」
「本当?夢中になって編んでたから分かんなかった」
「いやぁ……これ充分な量だろ」
「そう…?」

私は一度、首に巻いてみた。やはり恭介の言う様にぐるぐると二回巻けるぐらい充分に値する長さだった。

「ホントだ。じゃあ、これでいいや」
「ゆらって、そういうところ大雑把だよな。普通気にしながら編むんじゃないの?」

恭介は寝転んでいた体勢から座りなおした。

「首に巻けたらなんでもいいんだよ」
「ついでに俺のも編んでよ」
「なんで?買えばいいじゃん。お金持ってんだし」
「編んでくれてもいいじゃん。編めるんだし」
「……ファンの子はくれないの?」
「俺がファンから貰った手編みのマフラー巻いててもいいの?」
「まぁ、別にいいんじゃない?」
「つーか、俺の編むの嫌なの?」
「面倒くさい」
「面倒くさいってなんだよ。俺、一応彼氏じゃねぇーの?」
「一応彼氏だけどさ、恭介いっぱいお洒落なマフラー持ってんじゃん」
「ええ〜?俺、ゆらの手編みがいい。一回ぐらいそういうのくれても良くない?」
「じゃあ、これあげるよ」
「いやぁ……これ、明らかに女子仕様じゃん。毛糸ふわふわじゃん」

今度は恭介がマフラーを首に巻いた。

「たまに鳥の羽みたいなふわふわのヤツ首に巻いてんじゃん」
「いや、あれは衣装だから。普段巻かないでしょ」
「一緒じゃない?」
「おかしいだろ。あんなふわふわの普段巻いてたら」
「わかった。わかりました。編むよ。編めば良いんでしょ」
「頑張って編んでくれたら、俺もお礼する」
「何くれるの?」
「う――ん……じゃあ、スターダストメンバー全員のサイン」
「ごめん。いらない」
「即答かよ」


――――それから数日後。恭介があまりにもしつこかったのでマフラーを編んだ。
別に夜なべしたわけではないけど製作期間はたったの2日。恭介が好きな黒に近いグレイ系の毛糸で編みあげたマフラー。

「いいじゃん。いいじゃん」

首にぐるぐると巻いて、ついでに恭介もクルッとカッコ良く回って、何故か顔も作って決めポーズ。

「気に入ってもらってよかった」
「ふわふわの毛糸だったらどうしようかと思ったけど、よかったちゃんとした毛糸で」
「私の血と汗と涙の結晶だから大事にしてね」
「もちろん。一生大事にする」

よっぽど嬉しかったのか、家の中なのにマフラーを巻いたまま動きだした。

「ゆら、これ、お礼」

可愛くラッピングされた四角い包み紙を隣の部屋から取ってくると、私に渡した。

「どう?気に入った?明後日発売のスターダストセブンのライブDVD。しかも特別にメンバー全員のサイン入りポスター付き!どう!」
「微妙…………」